実務を行っていて、「相続税はどれくらいかかるのですか」とよくご質問を受けます。しかし、大抵の場合、相続税がかかりません。ただし、平成27年の税制改正で基礎控除の枠が4割削減されましたので、今後は、相続税の申告が増えることが予測されます。
相続税がかかるケースは、亡くなった人全体の7%程度です。資産家でなければ相続税の心配は必要ないのが現状です。
※相続税の申告に関しては、相続税申告サポートサービスを参照ください。
※相続税の還付請求に関しては、相続税還付請求サポートサービスを参照ください。
1.相続税の計算
(1)相続税の納税義務者
日本に住所がある個人が相続により財産を取得したときは、外国にある財産でも相続税を納める必要があります。
(2)申告書の提出期限
相続税の申告書の提出期限は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。申告書の提出先は、被相続人の死亡時の住所地の所轄の税務署です。
申告期限までに遺産分割が成立せず、遺産が未分割であっても相続税の申告書を提出する必要があります。この場合、法定相続分どおりに財産を分割したものとして申告します。その後、遺産分割が成立した時点で各人それぞれの分割に応じた納付税額を確定する申告をしなければなりません。
(3)課税価格
相続・遺贈により取得した財産+みなし相続財産-非課税財産の価額-債務および葬式費用の額+相続開始前3年以内の贈与財産の価額=課税価格
1)みなし相続財産とは、相続・遺贈により取得した財産ではないが、経済的に同じような効果があるとみなされるもの。
例:生命保険金、退職金・功労金など
2)非課税財産とは、国民感情、公益性、社会政策的に課税対象とすることが適切でない財産。相続税の課税対象外です。
例:墓地、仏壇、墓石、寄付財産、公益事業用財産
※お墓は、生前に購入しておかなければ非課税財産になりません。そして、代金は支払い済みでなければなりません。
※生命保険金と死亡退職金は、500万円×法定相続人の数まで非課税
3)債務および葬式費用
借入金 アパートの預かり敷金 未払医療費 未払所得税・住民税・固定資産税 |
保証債務 遺言執行費用 弁護士費用 税理士費用 土地測量費用 |
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通夜費用 本葬費用 死体の検索、運搬費用 |
香典返戻費用 法会費用 |
葬式費用として、認められる財産
1.埋葬、火葬、納骨、遺骸、遺骨の会葬費用
2.施与した金品
3.葬式の前後に支出したもののうち通常葬式に伴う出費
4.死体の探索・運搬費用
5.戒名料、読経料、葬儀社への支払い、会葬御礼費用
6.お布施、通夜、葬儀の際の食事代、茶菓子代等
葬式費用として、認められない財産
1.香典返しの費用
2.墓碑・墓地・仏壇の購入費、墓地の借入料
3.初七日その他法事に要する費用
4.遺体解剖など医学上・裁判上の特別処置に要した費用
(4)基礎控除額
基礎控除額=5,000万円+1,000万円×法定相続人の数(平成26年12月31日までに死亡した場合)
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数(平成27年1月から)
※法定相続人の数
相続放棄した者も放棄がなかったとして計算する。
被相続人に養子がいる場合
実子がいる場合 養子のうち1人まで相続人として計算する。
実子がいない場合 養子のうち2人まで相続人として計算する。
相続税の総額の計算
(1)課税価格-(2)基礎控除額=課税遺産総額
課税遺産総額を法定相続分で仮分割し、それぞれの税額を合計したものが、相続税の総額。
相続税の総額から、さらに各人に按分して各人の納付税額を算出する。
※相続税速算表参照
※相続税額の2割加算とは
被相続人の1親等内の親族(代襲相続人を含む)または配偶者以外の者が相続や遺贈により財産を取得した場合は相続税額に2割加算される。
なお、被相続人の養子となった孫(代襲相続人を除く)も2割加算の対象となりました。
ほとんどの場合、基礎控除でマイナスとなるので非課税のケースが多いのです。
さらに、2つの控除があります。
1)配偶者の税額控除
配偶者が相続財産の2分の1未満までを相続するときは相続税は全額免除となります。1億6千万円以内なら2分の1超でも全額免除となります。
2)小規模宅地の評価の減額
被相続人や親族が居住用・事業用として使用してきた宅地は、評価額が減額されます。
※平成22年度の税制改正により、適用条件が厳しくなりました。
事業を継続 | |||
事業を継続せず | |||
特定事業用宅地等
特定同族会社事業用宅地等 |
事業を継続 | ||
事業を継続せず | |||
居住を継続 | |||
居住を継続せず |
※詳細は、相続税における小規模宅地の評価減の特例とはを参照ください。
それでも課税される方は、事前に相続税対策を検討するべきでしょう。
2.延納・物納
相続税の一括納付が困難な時は、延納・物納の制度があります。
延 納
長期間にわたって年賦払いで納める方法です。次のすべての用件にあてはまらなくてはなりません。
1)相続税額が10万円を超えていること。
2)納期限までに金銭で一度に納付することが困難であること。
3)担保があること。(延納税額が50万円未満、かつ延納期間が3年以下の場合は不要)
4)納税義務者が延納申請書を提出して税務署長の許可を受けること。
物 納
相続財産そのもので納める方法です。次のすべての用件にあてはまらなくてはなりません。
1)延納によっても金銭で納付することが困難であること。
2)物納申請書を提出して税務署長の許可を受けていること。
3)金銭で納付することが困難な金額を限度とすること。
物納にあてることができる財産の種類と順序
第1順位 国債、地方債、不動産、船舶
第2順位 社債、株式、証券投資信託又は貸付信託の受益証券
第3順位 動産